東京うつ病相談室
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うつ病の治療

うつ病の治療
うつ病の認知療法
うつ病の薬物療法
  世界にはうつ病の治療ガイドラインがいくつかあります。稲田俊也によると治療ガイドラインはカーナビゲーションに近いとのことです。カーナビゲーションでは最初に目的地を入力するわけけですが,治療ガイドラインではまず治療目標を決める。ここでカーナビゲーションでは推奨される道順を示す,治療ガイドラインでは推奨される治療手順を示しているわけです。次にカーナビゲーションでは道順の決定,広い道を通ろう,最短距離を通ろう,もしGPSがついていたら渋滞していない道を通ろうということになるが,治療手順の決定にはまずは1剤ずつ使おう,まずは副作用の少ない新しい薬から使ってみよう,うまくいかなかったら違う薬を使おうということになる。つまり,カーナビゲーションは目的地までの道順を選ぶための補助道具にすぎないが,同様に治療ガイドラインはよりよい治療成果を得るために必要な臨床的決定を補助する道具にすぎない。治療がマニュアル化されるわけではない。日本精神科薬物療法研究会(JPAP)などが作成した日本のうつ病治療ガイドラインでは、軽症と中等症がひとくくりにされており、第一推奨治療として新規抗うつ薬であるSSRIまたはSNRIが推奨されています(我が国では現在SSRIは3種類,SNRIは2種類使用できます)。

 抗うつ薬は原則として単剤で投与します。しかし,効果発現には2週間位かかるため,不安や焦燥感があれば,抗不安薬を,不眠があれば睡眠薬を投与します。薬剤は少量から漸増し,副作用に気をつけながら,症状の改善をみるまでできるだけ増量します。十分量が処方されないと,病状が遷延します。6~8週で症状は改善するが,12週まで様子をみる。症状が改善しても症状が再燃しないように最低8ヶ月はそのまま投与を続け,以後漸減します。十分量を投与し,6~8週投与しても改善しない場合は,他剤への切り替えを考慮する。この際,急に薬を中止すると離脱症状が出現することがありますので,漸減する。抗うつ薬の併用よりはオーギュメンテーション(増強)療法として炭酸リチウムや甲状腺ホルモンを投与したり,非定型抗精神病薬を投与する。

精神疾患の薬物療法ガイド 稲田俊也編集
今日の治療薬2010


うつ病の認知療法
認知療法は,考え方のくせに焦点をあて,柔軟性を獲得することで,不安やうつなどの症状の軽減を目指す方法です。私たちは,ある出来事を体験したときに,さまざまな感情を経験します。そして多くの場合,そこで体験される感情は,出来事のせいだと理解されます。
例えば,「仕事で失敗をした」から「落ち込んでいる」という説明は,非常に納得の行くものです。しかし,この説明は,100%正確ではありません。確かに,「気分の落ち込み」を誘発した出来事は「仕事の失敗」ですが,同じように仕事で失敗をしたにも関わらず,落ち込みを経験しないこともあるからです。出来事そのものは共通しているにも関わらず,ある場合には落ち込み,別の場合には落ち込まないのはなぜでしょう。その理由を,「考え方」にあると考えます。例えば,先の「仕事で失敗した」場合に,それを「自分の能力が足りないからだ」「どうして自分はいつも失敗ばかりするのだろう」「今の仕事には向いていないのかもしれない」と考えれば,どんどん追いつめられていき,気分の落ち込みもひどくなってきます。極端な場合には,眠れなくなったり,仕事に行きづらくなったり,失敗を気にするあまり本来の力が発揮できなったりというような状態に陥るでしょう。
一方,「今回は十分な時間がない中,慌ててやった仕事だから失敗した」「はじめから無理な条件だったのだから,いくらかの失敗は仕方がない」「少なくとも納期を守ることはできたのだから,最悪の状況はまぬがれた」と考えることができれば,それほど落ち込みを感じず,むしろ達成感を感じることさえできるかもしれません。確かに仕事での失敗はネガティブな出来事ですが,それをどのように解釈するか次第で,経験される感情は大きく変わるのです。一般に,不安やうつの症状を持つ人は,様々な場面で上記の「自分を追いつめる考え方」をしていることが知られています。
しかも,こうした考え方はその時々で変化するのではなく,場面を超えてかなり安定的な形で,その人の特徴として現れると考えられています。それはいわば,長年の生活の中で培ってきた考え方のくせのようなものです。
認知療法では,個々人が持つ考え方のくせに気づき,常に同じような考え方に陥るのではなく,「別の解釈はないか」という視点の下,考え方のレパートリーに柔軟性を持たせていくことが目標となります。認知療法の適用範囲は非常に幅広いので,うつ病や不安障害以外にも,パーソナリティの偏りや怒りのコントロールなど,多くの問題の解決に用いられています。
後藤クリニック